ごあいさつ

鈴木晃仁 (慶應義塾大学 経済学部 教授)

よりよい医療を人々が受けることができるようになるには、社会は何をすればいいのでしょうか。この問いに基づいて、私たちはこの研究を始めました。*

もちろん、医学の基礎的な学問研究とそれに基づく治療技術のさらなる発展に期待することも重要です。また、新しい科学技術や制度によって患者の権利が損なわれないように考慮することも重要です。前者は医科学と医療技術、後者は医療倫理の問題です。しかし、医療がより広く私たちの生活にかかわり、何らかの形で医療を受けながら生きている人々がますます増加していることを考えると、私たちの生活と文化と社会の中で医療を考えることも重要です。そのためには、人文社会科学のさまざまな視点から医療を検討して、その洞察を社会に発信しなければなりません。医学史を研究する私たちのチームが、医師や医学者だけでなく、人文社会科学の研究者を多く含んでいるのは、そのような理由によるものです。

歴史的な視点を持つ研究者たちがこのチームに集まった理由は、現在と未来を構想するには、歴史を的確に知らなければならないからです。そして、その歴史研究の成果を、さまざまな媒体を通じて皆さまに発信していくことが、私たちのウェブサイトの一つの目標です。また、日本と世界において、さまざまな医学史の情報が発信されています。医者、医療関係者、患者、患者の家族、市民などのさまざまな人が対象になっていますが、そのような情報を紹介することも、このウェブサイトの目標です。

医学史が、研究者たちによって研究が深められると同時に、その深まった洞察を、社会発信の形に変えてお伝えすること。それを通じて、医学と人文社会学が社会の中で交差する地点を作り出し、皆さまと対話する場所を作り出すこと。そのような活動の一つのきっかけとすることを目指しています。

*本研究が持つ三層にわたる長い名称を記しますと、「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業(実社会対応プログラム)」「疫病の文化形態とその現代的意義の分析—社会システム構築の歴史的考察を踏まえて—」「医学史の現代的意義―感染症対策の歴史化と医学史研究の社会との対話の構築」です。日本学術振興会のウェブサイトは 「リンク」欄をご参照ください。

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