『精神疾患言説の歴史社会学:「心の病」はなぜ流行するのか』 書籍紹介/佐藤 雅浩(埼玉大学)

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『精神疾患言説の歴史社会学:「心の病」はなぜ流行するのか』(新曜社・2013年)

佐藤雅浩【著】 価格 ¥5,616(本体¥5,200)

 

 

 数年前に上梓させて頂いた本書は、副題にある通り、いわゆる「心の病」はなぜ流行するのかという問題に対して、歴史社会学的なアプローチを用いて迫った著作です。

 

 具体的には、近代日本で広く一般に知られた精神医学的な疾病概念(神経衰弱、ヒステリー、ノイローゼ)を取り上げ、なぜこれらの病が、医学者の研究共同体を超えて、広く一般大衆の関心を集めることになったのかを、主にマスメディアの言説を分析することで考察しました。

 

 またそれと同時に、上記のような流行に「成功した」事例だけではなく、別途ブログ記事でも触れた「外傷性神経症」という流行には至らなかった事例(失敗した事例)を比較対象とすることで、特定の精神疾患を「流行」の段階に至らしめる可能性がある社会的・経済的・政治的な要因について検討しています。

 

 扱った資料の限界や、分析が現代にまで行き届かなかった点など反省点も多いのですが、複数の事例を比較しつつ「精神疾患の流行」という現象を分析し、その普遍性と特殊性を考察できたことには、一定の意義があったのではないかと考えております。精神医学史や社会学的な医療化論、あるいは精神医学の知識や言説の大衆化といった問題に関心がある読者に手にとって頂きたい書籍です。

 

 

 

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