2017年度 立教大学史学会大会 ◆公開講演会◆ 医学史をひらく!-医と身体の史料からいまへ

立教大学史学会大会
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日 時:2017年6月24日(土) 14時30分~18時00分 ‐終了‐
会 場:立教大学池袋キャンパス 11号館A301教室


【公開講演会 プログラム】

(1)14:30 開会のあいさつ 松原宏之(史学会会長・立教大学史学科教授)
(2)14:35 趣旨説明 高林陽展(立教大学史学科准教授)
(3)14:45 「島田清次郎の入院と語りの多層性」
風野春樹(一般財団法人精神医学研究所附属東京武蔵野病院・リハビリテーション部部長)
(4)15:15 「診療録を通してみる近代日本の地域社会―明治中後期の栃木県塩谷郡喜連川町を事例に―」
廣川和花(専修大学文学部歴史学科准教授)
(5)15:45 休憩
(6)16:00 「史料から見る近代的身体-近現代イギリスにおける臨床体温計の製造・販売・流通をめぐって」
高林陽展(立教大学史学科准教授)
(7)16:30 コメント1 「トータル・ヒストリーとしての精神医療史」
鈴木晃仁(慶應義塾大学経済学部教授)
(8)16:45 コメント2「医の史料はだれのものか―医療史アーカイブの現場から―」
久保田明子(広島大学原爆放射線医科学研究所附属被ばく資料調査解析部・助教)
(9)17:00 全体討論

18:00終了予定、18:30より懇親会開催


内 容:20世紀後半以降の歴史学は医と身体の問題へ研究の手を伸ばしてきた。それは、1960年代末からのミシェル・フーコーの仕事に触発され、近代的な医と身体の歴史的な相対化をはかることを目的としたものだった。その後半世紀のときを経ても、医と身体の歴史への関心は強まっている。医と身体の問題が、出生前診断や遺伝子治療などの先端医療の問題から健康格差や途上国医療の問題にいたるまで、今日の社会においてますます重要視されているからだと言うこともできるだろう。そのような状況について歴史家が何か語りうるとすれば、それは、史料、すなわち過去に書かれた言葉、数字、図像などの遺物をとおしてである。歴史学は、史料からどのような知見をつむぎ、現代の医と身体の問題に対してなにを言わんとするのか。本公開講演会の狙いはこの点にあり、以下の発表者とコメンテーターをむかえる。風野は、近代日本を生きた作家島田清次郎の精神病院入院にかかわる記録から、精神病院という空間でものを書き残すことの意味を論じる。廣川は、近代日本の開業医の診療録から、西洋医学がローカルなものへと変貌する様相を論じる。高林は、近代イギリスの体温計製造者の史料から身体を数量的に表現する現代の身体観の起源を検討する。さらに、鈴木は精神医療史、久保田は医療アーカイブズ学の視点から、医と身体の史料の「ひらきかた」についてコメントを行う。医と身体の史料から、医学史をいまに「ひらく」となにが見えるのか。そこに、今日の社会の行く末、また歴史学の課題のひとつが見てとれるだろう。