高林 陽展 立教大学(文学部)准教授

経歴:立教大学で西洋史を学び、その後ロンドン大学ウェルカム医学史研究所にて博士号(医学史)を取得。主として、19世紀から20世紀のイギリスにおける精神医療の歴史に関する研究を行ってきた。近年は、痛みや感覚の文化史や現代の脳神経科学と人文社会科学の関係に研究関心を広げている。主たる業績に、The Political Economy of English Psychiatry in the Early Twentieth Century (Unpublished Ph.D. Dissertation, University College London, April 2008)、「慈善医療の商業化とスキャンダリズム-ホロウェイ・サナトリアム精神病院を中心に」(『史林』、2011年)、「第一次世界大戦期イングランドにおける戦争神経症:現代精神医療の誕生」(『西洋史学』、2011年)、「精神衛生思想の構築―二〇世紀初頭イングランドにおける早期治療言説と専門家利害―」(『史学雑誌』、2011年)などがある。

 

研究の紹介:この研究プロジェクトにおいては、現代日本の医科学が現代を生きる私たちの生活に及ぼす影響を検討する。その際、特に注目するのは、「量的に表現された自己」(quantified self)というアイデンティティのあり方である。近現代を通じて、人間身体の状態は、体温、脈拍、心拍から血液や脳内の化学物質の量など多様な量的尺度によって測られるようになった。それは病気を診断するためだけではなく、身体の日常的な正常状態を確認するためにも用いられるものであった。例えば、スマートウォッチなる器具を用いれば、運動の際の脈拍や心拍を計測し、その記録をインターネット・サーバーへと送信し、日々の身体状態の変化を統計化される。この数字で表現された身体状態のあり方は、性格や癖と同じように、その人の特質を表わす重要なインデックスとなる。計測された量で自己を表現すること、それが「量的に表現された自己」である。このような身体と計測の文化は、いずこから発し、いまの私たちの生活を作りあげたのだろうか。来し方と行く先をみつめるのは、医学史研究の重要なアウトリーチとなるだろう。

 

 

 

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